十戒後半の最初が第五戒の「父と母を敬え」で、これは人間関係の基本である。「敬う」とは「相手に重みを与える」という意味で、その相手(父母)にふさわしい重みをきちんと理解し、わきまえている。そして、その重みにふさわしくその人を扱い、接していることだ。日本語では「親孝行」という素晴らしい言葉がある。親を大切にすることは世界中、どの民族、社会にも共通する認識だ。当然で自明のことだが、改めて自分自身に問いかけてみたい。果たして私は父と母を重んじているだろうか。少子高齢化社会の日本では、特に第五戒の真意をくみ取る必要がある。
父母を敬う理由が、「あなたの齢が長くなるため」というのも興味深い。父母が長寿で幸せになるなら納得できるが、なぜ自分の長寿や幸せなのか。①生命の尊さがわかる→父母を敬う者は自分の人生を肯定し、感謝できる。父母を軽んじることは、自分への軽蔑、否定につながる。②神を敬う者になる→父母の背後に神がおられ、生かされ、守られている幸せを実感できる。③他人を敬い、良い人間関係を築ける→最も身近な他人は父母。父母との良い関係が他の人間関係をも円滑にする基本である。
次に、うるわしい老いの典型的な姿をパウロから学びたい。彼は最後の日の迫っていることを自覚して記した。「私が世を去るべき時は来た。私は戦いを立派に戦い抜き、走るべき行程を走りつくし、信仰を守り通した。今や義の冠が私を待っているばかりである。」
第二テモテ4:6~8